──以前に比べて高価格帯の商品を増やしている。
2008年のリーマンショック後から値下げを3カ月ごとに8回してきた。それによって顧客層が年収200万円から500万円ぐらいに偏った。昨年の下期から中の上ぐらいの商品開発を増やし、年収800万円ぐらいの顧客に引き上げる戦略がうまくいっている。これまでは値下げしすぎたと反省している。
たとえば3人用ソファだと従来は約4万9000円がプライスポイント(売れ筋)だったが、今は約7万9000円に上げている。近く約19万9000円する最高価格帯のソファも発売する予定だ。
──商品の中身そのものも変えている?
勘違いしている人が多いが、同じモノを高くしているわけではない。座り心地のいいソファを新たに開発するなど素材から見直し、安心・安全にも力を入れている。これまでは安さだけに集中して品質向上の努力が足りなかった。もちろんこれからも安さを追求はするが、「安かろう悪かろう」では困る。品質重視で作った商品は、顧客からもいい評判を得ている。
たとえば、座り易いソファ、寝心地のいいベッドを商品化している。ベッドもソファも固めの方がいいという人が少なくないが、それは逆だ。固めというのは日本独特で、若い時はいいが、歳をとると腰痛と肩こりの原因になってしまう。固めだと耐圧が偏ってかかってしまうから、やっぱり身体にフィット した方がいい。ニトリでは耐圧が全部均等になるように欧米型に変えている。
──開発輸入品が8割を超え、円安は逆風になるはずだが。
為替予約を早めにしている。今年度は1ドル99円、来年度も101円で固めており、影響は緩和できる。1ドル100円ぐらいが適正だと思うが、120円までは対応できる。
原材料なども交渉できるものはすべてやっている。ベッドやソファはコイルから開発することで、大幅な原価低減を実現した。取引先や生産国もつねに最適なところに変更している。28期連続増収増益は確実だ。
――新業態の展開についてはどう考えているのか。
衣食住でいうと、住関連はほかのフォーマットでやるかもしれないし、やらないかもしれない。ただ衣と食は全然考えていない。業態がまったく違うと思っているからだ。
「死ぬまでかかわり続ける」
──国内の家具市場は縮小傾向にある。今後の展望は。
長期ビジョンでは3000店。ニトリはまだまだ増える?
当社でもかつては売り上げの100%が家具だったが、現在は43%に下がっている。一方で(雑貨などの)ホームファッションが過半を占める。ソファ、ベッドなどの脚物はまだ売れるものの、(タンスなどの)箱物は住宅で不要になってきている。
日本はオーバーストア状態で、淘汰が起こるのは必至だ。当社は、国内で今後5~6年は30~40店ペースで出店するが、その後はだんだん少なくなる。一方、海外は出店を増やす。長期ビジョンでは2032年に国内外で3000店(2014年8月末で国内320、海外23)にする計画だ。その時点で海外比率は7割を目指しており、現在は月に10日ほど海外へ出張し、店舗開発と商品開発を急いでいる。
――3000店への拡大は途方もない夢のように感じるが。
夢ではない。ビジョンだ。必ずやる。私の乗っているクルマの車体番号も3000だ。それは決意と覚悟を示している。そのとき私は80歳代で相談役や顧問になっているかもしれないが、オーナーに変わりはない。死ぬまでかかわり続ける。現役でやる。引退は死ぬときだ。
にとり・あきお●1944年生まれ。北海学園大学卒。67年「似鳥家具店」を札幌で創業。全国トップの家具・インテリア製造小売りチェーンに成長。