【陰陽師Ⅱの物語り】
平安の時代。それはまだ人とあやかしが共に生きていた時代。
都では夜闇を鬼が跳梁し身分貴き者たちを襲うという怪異が相次いでいた。その鬼は太陽が黒く隠れる日暮れの現象(日蝕)以来出没し、以来4人の人々が襲われていた。それも一人目が肩、二人目が鼻、三人目が口、四人目の神官に至っては足を喰われているという猟奇的なものであった。
源博雅(伊藤英明)は右大臣・藤原安麻呂(伊武雅刀)の依頼を受け、陰陽師・安倍晴明(野村萬斎)の元を訪れる。安麻呂には娘がいた。類まれな美貌を持ちながら男装に身を包み、弓を扱わせれば右に出るものはいないことから「鬼も恐るる男姫(おのこひめ)」と呼ばれる日美子(深田恭子)。その日美子がその日隠れの起きた日以来、夜な夜な覚えなく夢遊病のように彷徨い歩くというのだ。都を騒がす鬼と娘に何か関連があるのではと心配する安麻呂。何も案ずることはないと言いきる晴明だったが、安麻呂が日美子についてどうも何かを隠していることを悟っていた。
そんな折、博雅は鬼が跋扈するといわれる夜道の帰りに、琵琶を美しく奏でる若者・須佐(市原隼人)と出会う。須佐の故郷に古くから伝わるという清らかで切ない調べに感動し、管弦の友としてたちまち意気投合する2人。だが須佐がいったい何者なのかは、博雅にも謎であった。
また同じ頃、都にはどんな傷や病もたちどころに治すことから、神と崇められている術師・幻角(中井貴一)が現れていた。平安の都はきらびやかなる貴族たちの宴が毎夜行われる影で、悪政や貧困に苦しむ民たちのあえぐ声が闇を満たしていた。光の当たらない民衆は、身分の分け隔てなく病を癒す幻角を本当の神のごとく敬っていたのである。そこに巷流れる幻角の噂を聞きつけた貴族たちがいた。権力を握ろうとする藤原一族や、安倍晴明のことを心よく思わない彼らは、謎の男・幻角を担いで晴明に対抗し鬼退治をしようと画策する。そして内裏では、都の宝「アメノムラクモの剣」が音をたてながら怪しい光を放ちだす。「アメノムラクモの剣」にただならぬものを感じ取った晴明は、剣について古い書物を調べ始める。晴明・博雅・蜜虫(今井絵理子)は朝廷と出雲の国との衝撃の事実に辿り着く。
果たして「鬼」の正体とは?安麻呂が隠す事実とは?幻角とは一体何者なのか?
晴明は陰陽道の神髄「八卦」に事件の関連性を見出すのだが、謎を解き明かすその八卦の延長戦には、朝廷の力によって闇に葬られた、出雲国の衝撃の闇がひろがり始めるのであった。
【原作紹介】
夢枕貘。1951年1月1日神奈川県生まれ。日本SF作家クラブ会員、日本文芸家協会会員。77年SF専門誌『奇想天外』に「カエルの死」でデビュー。81年初めての新書『幻獣変化』を出版。82年「キマイラ・吼」シリーズ第1作『幻獣少年キマイラ』(表紙&挿絵 天野喜孝)を発表。以降、「サイコダイバー魔獣狩り」、「闇狩り師」、「餓狼伝」、「大帝の剣」、「陰陽師」などの各シリーズが立て続けにベストセールスを記録。89年に『上弦の月を喰べる獅子』で第10回日本SF大賞。98年『神々の山嶺』で第11回柴田錬三郎賞を受賞。01年に岡野玲子によるコミック『陰陽師』が第5回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。山岳、冒険、幻想小説などの分野で広範な読者を魅了し続けている。また歌舞伎俳優・坂東玉三郎のために書下ろした『三國傳来玄象譚』(台本:93年歌舞伎座で上演)、『楊貴妃』(作詞)など、小説以外でも多彩な才能を存分に発揮し注目を集めつづけている。
『陰陽師』書籍情報:
2003/4月『陰陽師 太極ノ巻』発刊(文藝春秋)
2003/7月文庫『陰陽師 生成り姫』発刊予定(文藝春秋)
【出演者紹介】
安倍 晴明(あべのせいめい)
雅の世界とは対照に、その闇に潜むあやかしを「呪」をもって制する男。朝廷に仕える陰陽寮に属しながらも、帝を中心とした政治(まつり)事には一切かかわらないニヒリスト。しかし、陰陽道に精通したその「力」は平安随一と言われている。
野村 萬斎(のむらまんさい)
1966年4月5日東京都生まれ。狂言師野村万作の長男。70年3歳のときに「靱猿」で初舞台を踏む。94年曽祖父五世万造の隠居名「萬斎」を襲名。同年、NHK大河ドラマ「花の乱」に細川勝元役で出演。97年NHKの朝の連続ドラマ「あぐり」に望月エイスケ役で出演し数々の賞を受賞。映画出演は黒澤明監督の「乱」(85年)に鶴丸役での出演と本作「陰陽師」シリーズの安倍晴明役のみとなる。また世田谷パブリックシアターの芸術監督にも就任。英国の古典シェイクスピアの「Hamlet」6月公演に向けメインスタッフを英国から招聘し準備に取りかかる。日本公演後には英国サドラーズウェルズ劇場での上演も決定している。本年度は映画「陰陽師||」をはじめ、日本の伝統芸能の枠を超えて活躍する狂言師・野村萬斎に、国内外から大きな注目が集まる。
【映画「陰陽師」受賞リスト】第44回ブルーリボン賞・主演男優賞第25回日本アカデミー賞新人俳優賞と主演男優賞(優秀賞)のダブル受賞
源 博雅(みなもとのひろまさ)
朝廷の政治事に加わる立場ながらも、生まれまがらの純粋な魂を失わない殿上人。その清らかなる心は晴明の心をも開かせる存在。博雅の奏でる龍笛は、何人の心を和ます。
伊藤 英明(いとうひであき)
1975年8月3日岐阜県生まれ。
主な映画出演作品:「秘密」(99年滝田洋二郎監督)「Blister」(00年須賀大観監督)「クロスファイア」(00年金子修介監督)「LOVE SONG」(01年佐藤信介監督)「陰陽師」(01年滝田洋二郎監督)「海猿」(04年6月公開羽住英一郎監督)
【陰陽師用語集】
陰陽師・安倍晴明(おんみょうじ・あべのせいめい)
平安中期に数々の帝、殿上人から絶大なる信頼を受けた実在の陰陽師。延喜21年(921年)に生まれ、寛弘2年(1005年)に85才で没したと伝えられるが真相は定かではない。その出生に関しても、母は白狐であったという程、晴明にかかわる事柄はすべてミステリアスな謎に包まれている。
陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)
万物は対局から光と闇によって二分する原理「陰陽論」と、世界が木火土金水によって成り立つとする「五行説」を組み合わせて森羅万象を説明するのに用いられた哲理。世のすべては陰陽の二気によって生じ、五行のうち木・火は陽に、金・水は陰にそれぞれ属し、土はその中間にあるとし、また五行は天において十干となり、地において十二支となって作用する。これらの消長によって自然と人事の吉凶などを説明する古代中世においては世の理を分析する最も科学的な理論として定着していた。
陰陽師(おんみょうじ)
律令制で定められた政府機関で、禁中の政(まつりごと)を担当する中務省陰陽寮に属する役人。その職務は陰陽道(土地の吉凶を判じる相地および式占)、暦道(暦の作成と吉凶日などの選定)、天文道(占星術)、漏刻(時刻の管理)の四種類に大別される。長官にあたる陰陽頭(おんみょうおのかみ)の下、陰陽博士(おんみょうのはくじ)一名と陰陽師(おんみょうじ)六名、天文博士(てんもんのはくじ)一名、暦博士(りゃくのはくじ)一名、漏刻博士(ろうこくのはくじ)二名で構成される。明治政府が1879年に陰陽道禁止令を発布するまで、陰陽師たちは支配階級から一般民衆まであらゆる階層から敬意を払われていた。陰陽道という概念が日本の生活に古来から息づいていた証といえる。
五芒星(ごぼうせい)
陰陽道で五芒星は魔よけの呪符として伝えられ、セーマン印あるいは晴明桔梗印(せいめいきつきょういん)と呼ばれている。印にこめられたその意味は、陰陽道の基本概念となった陰陽五行説、木・火・土・金・水の五つの元素の働きの相克を表したものである。陰陽師・安倍晴明の象徴的である五芒星の星マークはあらゆる魔よけのお札として重宝された。特に弾除け(多魔除け)の意味から旧日本陸軍・軍服の階級章マークとして採用されていたのは有名なエピソード。
平安京(へいあんきょう)
西暦794年、唐の長安の都をイメージして建設された東西4500メートル、南北4700メートルの都。平安京への遷都の理由は、謀反の濡れ衣により自殺に追い詰められた早良(さわら)親王による祟りが原因と考えられている。その惨状(落雷、豪雨、干ばつ、飢饉)の激しさから桓武天皇は、僅か10年で長岡京を捨てる決断をした。新しき都は、北に山があれば玄武、東に川があれば青竜、西に大道があれば白虎、南に池があれば朱雀が置かれ土地を守護する、陰陽道「四神相応」の概念により建設が行われた。更に、鬼門の方角・比叡山に延暦寺を置き、平安京の周囲を神社仏閣で埋め尽くし、その上、都の正面には朱雀門を挟んで右に西寺、左に東寺を配置している。平安京は、桓武天皇にとって弟・早良親王の怨霊から自分自身を護る、あらゆる霊的防衛手段を張り巡らした究極の要塞都市であったといえる。平安京遷都の基本概念となった「四神相応」は、本年築城400年を迎えた江戸城も同様の理念により建設が行われた。
日隠れ(ひがくれ)
太陽が黒くなる「日蝕」のこと。太陽がすべて隠れてしまう「皆既日蝕」が、日本で観測されたのは、今日までにわずか三度。最も古い「皆既日蝕」は、平安時代中期の天延三年(西暦975年)、つまり安倍晴明が生きていた時代に起っている。当時「日蝕」は、悪しきことの起る前兆として恐れられていた。今回の物語でも、この日隠れを境に、都に鬼が現れ、宮中の人々が次々に襲われ始める。
八卦(はっけ)
易で、陰と陽を示す算木(さんき)に現れる八つの基本形。乾(けん)兌(だ)離(り)震(しん)巽(そん)坎(かん)艮(ごん)坤(こん)からなる。自然界、人間界を象徴し、例えば、乾=天または父、兌=沢または少女、離=火または次女・・・等、それぞれが森羅万象の様々なものを象徴することができる。本作ではこの八卦の影に、「ある謎」が隠されている。
出雲国(いずものくに)
アマテラスやスサノオなどが登場する「出雲神話」の舞台であり、独自の文化圏を形成したが、3〜4世紀に大和朝廷の支配下に入ったとされている。本作の物語を語る上で最も重要な意味を持つ場所。
アマテラス
神話の中で最高の地位を占める太陽の神。黄泉国(よみのくに)から戻ったイザナギノミコトが、その身を清めるために、左目を洗った時に生まれたとされる。美しく、哀れみの心に溢れた柔和な女神。
スサノオノミコト
イザナギノミコトが、鼻を洗った時に生まれたとされるアマテラスの弟神。気性が荒く、様々な混乱を起こしたために、天上界を追放される。ヤマタノオロチを退治した神としても有名。
アメノムラクモの剣
平安京に伝わる都の宝剣。スサノオノミコトの手によって退治された、ヤマタノオロチの尾から出てきたとされる。
天岩戸伝説(あまのいわとでんせつ)
スサノオノミコトの暴挙に堪え兼ね、洞窟に身を隠してしまったアマテラスを、様々な神が力を合わせて外に引き出すまでを描いた神話の中のエピソード。太陽の神であるアマテラスが姿を隠してしまったことによって、世界は一時闇に包まれることとなる。
天御社(あめのみやしろ)
アマテラスが支配し神々が住むとされる天上の世界にそびえ立つ申請なる社。天御社をくぐったものは二度と現世には戻ってこないと古書に伝わっている。
【陰陽師Ⅱ公式網站】
http://www.onmyoji-movie.com/
【附註】
陰陽師Ⅱ將在本月二十七日(2004/02/27)於全台公開上映,有興趣前往觀賞的朋友,記得先找第一集來看看喔。不然,去翻陰陽師的中文版小說(繆思文化,目前出版至第四集‧鳳凰卷)或是中文版漫畫(原作:夢枕貘;漫畫:岡野玲子,東立出版,目前發行至第五集)。這樣,對自己在觀賞「陰陽師Ⅱ」之時,才不會完全看不懂其中的內容,而白花了去電影院欣賞的時間及金錢唷。