学生ら「悔しいけど頑張った」 台湾議会占拠の撤退
台湾-中国間の「両岸サービス業貿易協議」締結に反対して立法院を占拠した台湾の学生らが、4月10日午後6時(日本時間午後7時)に議場から撤退すると発表したことを受けて、馬英九総統や野党側が肯定的な評価を示した。しかし、馬総統側は学生らの要求に対して全く譲歩していないことから、学生らとの最終的な「合意」までには、まだまだ時間がかかりそうだ。
■学生ら「悔しいけど頑張った」
学生側の林飛帆、陳為廷両代表は「議場からの撤退は活動の終焉ではない、新しい始まりだ」と強調した。議場内で20日間を過ごした経済学部の学生・陳さんは「撤退するのは悔しくて寂しい。まだ馬英九総統からは具体的な答えが出ていないため、去るべきではないとは思うが、学生たちは皆よく頑張った」とコメント。立法院前で座り込み抗議を続けてきた社会人の傅さんと徐さんも退去の決定を支持し「これほどの成果を挙げたことについて褒めてあげたい」と話した。
■野党は学生らに声援
台湾の最大野党・民進党は「学生運動のよい手本だ」と肯定的な評価を示すとともに、協議を監督する法律の早期通過を目指す意向を示した。また、「国民の意思に反する行為をしないでほしい」と、与党・国民党を強く批判した。
■馬政権との対立は続く
立法院長(議長)の王金平氏が6日に宣言した「中国との協議を監督する法律が成立するまでは、与野党協議を招集しない」との言葉を受け入れ、学生側は立法院からの撤退を決めたが、馬総統は7日夜の記者会見で、「王氏の発言は、政権側の主張とは矛盾していない」との姿勢を崩しておらず、監督法案と協定審議を「同時進行」するとの方針を改めて強調した。
馬総統の発言を受け、学生側のリーダー陳氏は「馬総統の主張は共通認識に達していない」「馬総統の発言は自己欺瞞(ぎまん)だ」と語り、政府側が提出した監督法案には監督機能がないと主張した上で、「個人の意志で国会を操るやり口をやめて欲しい」と呼びかけた。
(文責:TomoNews(http://jp.tomonews.net/)/台湾)
THE PAGE 4月9日(水)0時0分配信
台湾の学生はなぜ立法院を占拠したの?
原因となった「サービス貿易協定」とは
3月18日の夜、台湾の国会にあたる立法院の議場を、数百人もの学生たちが占拠しました。23日夜にはデモ隊が行政院(内閣に相当)にも突入。これは治安当局に強制排除されましたが、立法院の占拠はいまも続いています。台湾史上でも類を見ないデモ運動の原因となったのは、昨年6月に中国と台湾で調印された「サービス貿易協定」。この協定に反対の意を示す学生たちが、今回の行動を起こしたのです。なぜ学生たちは、ここまでの反発を見せたのでしょうか。
サービス貿易協定の強行採決に反発
サービス貿易協定とは、中国が80分野、台湾が64分野の市場を解放しようというものです。昨年の調印を経て、3月17日より台湾国内での最終的な同意を得る審議が立法院で行われていました。しかし、この協定は「台湾にとって不利益な条約」と見る向きが強く、最大野党の民主進歩党を中心に反発の動きが出ていました。
台湾の与党である中国国民党は、野党の意見には応じず、「時間切れ」として審議を一方的に打ち切り。十分に話し合うことなく、強引に協定の同意を進めようとしました。これに学生が抗議し、一連の“占拠事件”へと至ったのです。
台湾にとって不利?な協定
サービス貿易協定が台湾にとって不利益と考えられる理由はいくつかありますが、その最たるものの一つに「中小企業への打撃」があります。市場が開放されれば、中国企業や労働者が大量に流入してくると考えられます。巨大な資本を持つ中国企業が参入すると、台湾の既存企業、特に中小企業は厳しい状況に置かれ、また賃金の安い中国人労働者が増えれば、台湾の人々の労働環境はマイナスの影響を受けかねません。
台湾の中小企業が淘汰され、賃金の安い中国人労働者が入ってくれば、学生たちの就職先が少なくなる可能性が高まります。その危機意識が要因となって、これほどの大きな運動が生まれたのでしょう。
中国との「統一」で不安視する声も
さらに中国と台湾は、統一するか否かで対立してきた関係。もし協定が同意され、中国企業の進出が著しくなれば、中国の望む統一が近づくことも考えられます。さらに、今回の協定では出版・印刷の市場も解放されるため、中国の出版業が一挙に台湾へ進出すると不安視する声があります。
「いちご白書」をもう一度 1975
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