お風呂のお湯「追い焚き」VS「毎日入れ替え」両者の利点は?
生まれてから大人になるまでに染みついた「家庭の流儀」はそう簡単
に変えられないし、その流儀は誰にでも通用するわけではない。しかも
、流儀の違いは一緒に生活してみないと気づかないから厄介だ。どんな
に愛し合って結婚しても、どちらかが譲らなければ“最悪のケース”まで
発展しかねない家庭内の問題。その1つが「お風呂のお湯の追い焚き対
入れ替え問題」だ。
1年前に会社を定年退職したA氏は、妻と一緒に息子夫婦の家を訪ねた。
「2晩泊まったのですが、驚いたのは2日目の夜。息子が風呂を用意して
くれたのはいいが、追い焚きをしていたんです。“前の日と同じお湯なんて
汚いじゃないか”というと、“嫁は昔から2日に1回しか替えていなかった。
水道代がもったいないといってオレの意見は聞き入れてもらえないんだ”
という。息子が情けないと思うと同時に、2日間も同じ湯を使う家庭がある
のかと仰天しました」(A氏)
追い焚きか、入れ替えか。風呂に関するこの議論もまた互いに妥協しない。
「せっかく追い焚き機能がついているのに、妻は毎回、お湯を入れ替える。
見た目には汚れているようには見えないし、もったいないと思うんだけど」
と首を傾げるのは30代男性のB氏。しかし、妻は、「1回入ったお湯は体の
汚れでバイ菌だらけ」と一蹴するという。この夫妻とは逆に、
“絶対毎日入れ替える派”の妻の主張で目立ったのは、
「同じお湯を使うこと自体が不衛生。しかも夫が入った後のお風呂のお湯なん
て汚くて、前日の残り湯に入るなんて絶対無理。髪の毛が浮いていたり、色が
濁っているようにも見える」
というもの。どれだけ夫は汚れ物扱いされているんだか……。ただ、この妻
のように“毎回お湯を入れ替える派”が気にするのは、やはり衛生面だ。一方、
“追い焚き派”は、「夜と朝、2回お風呂に入るので、そのたびにお湯を入れ替
えていたら水道代がもったいない」(30代男性)
「毎回入れ直すのは、時間がかかって面倒。入った後に風呂水洗浄剤を入れて
いるから、汚くない」(40代女性)と主張。
風呂に追い焚き機能がついていなくても、「熱いお湯を足して入る」という人
もいた。
気になる衛生面について、日用品大手メーカー・ライオンのお洗濯マイスター
・山縣義文氏はこう話す。
「お風呂のお湯は毎日替えたほうがいい。菌が増殖しやすい温度は36度くらい。
つまり少し冷めた程度のお湯です。前の日のお湯は冷める途中で菌が増殖してい
るのです」
衛生面では完全に“入れ替え派”に分がありそうだが、“追い焚き派”が主張する
光熱費はどうなのか。節約アドバイザーの和田由貴氏に、追い焚きにかかるガス
代と入れ替えた場合の水道代・ガス代を比較してもらった。
「冬場で翌日の浴槽の湯温が水のように冷たくなっている場合、お湯の量が200
リットルと仮定すると、追い焚きにかかるガス代は91.7円。夏場で湯温が10度く
らいしか下がらなかった場合は32.6円。対して、お湯を入れ替える場合はガス代
79円プラス水道代が45.6円で合計124.6円かかる計算になります」(和田氏)
コスト面では追い焚きに軍配。これを「もったいない」と思うか
「そのくらいなら新しいお湯で」と思うかは、各家庭の判断に委ねるしかあるまい。
※週刊ポスト2014年2月14日号