「エシカルファッション」「フェアトレード」って何?
良識にかなって生産、流通されているファッション商品のこと。英語で「道徳、倫理上の」という意味の「ethical」からきている。エコやチャリティー、環境や産業復興、発展途上国への支援等、様々なアプローチがなされている。エシカルファッションは、商品を購入する消費者に対し「環境や社会に配慮している」という意識を与える為満足度が高く、有力ブランドがその効果に着目している。
以下のように生産されているものをエシカルファッションと定義
素材の選定(オーガニックコットン、リサイクルコットン)
素材の購入(発展途上国からの買い付け)
商品の製造(化学染料を使用せず、天然染料を使用して繊維を染色する等)
商品の流通(フェアトレード)
日本でも機運高まる「エシカルファッション」
衣服をつくる過程で、環境への負荷や社会貢献に配慮する――。欧米で根付きつつある「エシカル(倫理的な)ファッション」が日本でも広がってきた。ユナイテッドアローズが今季から新ブランドを立ち上げるなど、大手企業から若手デザイナーまで、素材や製法といった「服の源流」を意識する機運が高まっている。
流行でなく当たり前に
ユナイテッドアローズは、今春夏から新ブランド「テゲ ユナイテッドアローズ」を立ち上げた。7月に売り出すコットンジャケットの生地はアフリカ・ブルキナファソ産の手織り。鮮やかなビーズ付きのトートバッグやかごバッグは、ケニアのマサイ族の女性らの手作りだ。
国連機関・国際貿易センターのプロジェクト「エシカル・ファッション・イニシアチブ(EFI)」での協働事業。ファッションを通じた仕事を作ることで、貧困女性の経済的自立をめざす。ステラ・マッカートニーなど世界の著名ブランドが参加するが、日本でブランド化をしたのは初めてだという。
「テゲ」とは、現地語で「手」の意。アフリカで生産者と直接やりとりした栗野宏文上級顧問は「優れた手仕事は、日本語の『手・芸』に通じると思った」と話す。
農業国のブルキナファソでは、昔ながらのやり方で綿花を育て、生地を手織る文化が残っている。電気のない作業場で使われていたのは、EFIが洋服用に開発した簡易手織り機。「機械織りと違い、ゆるめの打ち込みの質感がいい」と栗野。デザインは、糸の色や柄を栗野らが日本向けに指定。角度によって黒にも深緑にも見える、落ち着いた風合いの生地になった。日本でパターンと縫製をし、実用的なジャケットに仕上げた。
栗野は「社会貢献もあるが、アフリカの手仕事が好きだったし、何より消費者に胸を張って出自が説明できる物作りができるから。創造性や質とともに、エシカルの要素はもはや不可欠になっている」
重要なのはトレーサビリティー
4月下旬、東京で行われたヨガイベントで「エシカルファッションショー」が開かれた。企画したのは「エシカル ファッション ジャパン(EFJ)」。国内外でエシカルに取り組む企業やデザイナー、商品を発信している。ショーで披露された「cil(シル)」は、ユーカリを主原料にした繊維レクセルを使った服を作っている。光沢がある布は化繊のようだが、天然繊維。洗濯もできる。デザイナーの田川文子(50)は「娘のアトピーを機に、素材や生産過程を考え始めた」。
縫製は国内にこだわる。海外での安い工賃が問題になる一方、価格競争で国内の生産現場は疲弊し、高齢化もあって産業は途切れつつある。「持続するために、少しでも力になれれば」と田川。
コーヒー豆の麻袋でバッグを作っているのは「喫茶去(きっさこ)」の岡本由梨(32)。世界各地の個性的な麻袋の図柄を生かしたデザイン性と、軽くて丈夫な実用性が好評だ。利益の3%をベトナム農村部の支援をする団体に寄付している。
元バッグメーカー勤務。麻袋が輸入後に廃棄されていると知り、「技術で質の高い製品にできないか」と、09年に活動を始めた。袋地の強度を増す両面加工は、趣旨に賛同した東京の職人が協力。その他のデザインやパターン、縫製、金具打ちはほぼ自分で担う。
受注が増え、生産数は年約100個から月100個に伸びた。「リユース素材だからこそ手間をかけ、魅力ある製品作りを心がけている」
EFJではエシカルな取り組み例として「不当な労働と搾取をなくす」「捨てられるはずだった物を活用」「地域に根ざす物作り」など九つの分類をあげるが、いずれにも通じるのは「トレーサビリティー(生産履歴)の重要性」だと竹村伊央代表は言う。
消費者の関心は高まっている。竹村は「比例してブランドも増えている。流行ではなく当たり前になるのが目標。エシカルだけに頼らない物作りが課題」と話している。=敬称略
(帯金真弓)
http://www.asahi.com/and_w/fashion/SDI2014052366711.html